ホラゲさんのこと②

相模原辺りのショッピングモールのオープンセレモニーの仕事があったときも、ホラゲさんは値切って、交通費を惜しんで、自分の車で機材を運ぶと言い張った。俺と、当時付き合っていたクラリネットの彼女の2人は俺の(親のだが)車で行き、現地で合流するということになった。

俺と彼女は現場にだいぶ早く着いたが、ホラゲさんが来ない。

首都高の入口が閉鎖されていたとのことで、オープニングに間に合わないという。

でも、ショッピングモールのオープンの時間はもちろん決まっている。最初がいちばん肝心で、「どかーん、とファンファーレをやってくれ」という依頼に応えるべく、かなり打ち合わせと練習を積み重ねてきていた。

ところが、メンバーが間に合わない。

全員間に合わないならまあ、もう、どうしようもないんだが、間の悪いことに、トランペットとクラリネットという、高音ヒョロヒョロの楽器が1本ずつ。ドラムロールもなにもなく、それでも主催者側は、やれ、という。まあ、そう言うわな。

やりましたよ。最高に弱々しい、最低のオープニングのファンファーレ。あれ、絶対ない方がよかったと思うんだけど。

 

そのあと遅れて来たホラゲさんはそれはもう、主催者側からめちゃくちゃに叱られて、あとのステージはちゃんとやるように釘を刺されて俺たちのバンドの方に合流したんだが、その「打ち合わせ」のとき、ホラゲさんはもう、ずっと「ヤングジャンプ」のページを覗き込みながら心ここにあらずで、ガクガク頚を振りながら生返事を繰り返すのみで、よくこんなでイベント会社なんてやっていけてるもんだと思ったもんで。

 

で、そのあと、ホラゲさん絡みでまあなかなか得難い経験をすることになった。