奇を衒え

俺は「奇を衒って」生きている。

 

髭を生やしハンチングを被り、お堅い職場にジーンズとパーカーで出勤し、目上の人間にも敬語は使わず、おかしな写真を撮り歩き、SNSでは穿った偉そうな意見を述べ、ほとんど人とは付き合わず、孤高を気取っている。

 

だって、俺は俺だぜ?唯一無二の、特別な存在の俺様が、そんな他の奴らと同じようなこと、できるか?

 

でも内心では気付いている。俺は普通の人間なんだって。普通とはなにかって?常識的なつまんない奴だってことだ。

 

職場にラフな格好で行くのはそれが認められると理解しているからだし、敬語を使わないのもそれが許される、気の置けない相手だけだ。人と付き合わないのは、恐らく、見破られるのが怖いからなのだろう。

 

学生時代は、音楽をやっていたこともあり、周囲には驚異的な個性と才能を持った人間が溢れていた。「ナカジはソツがなくてつまらない」とよく言われたもので、それが悔しかった。その後就職して周囲にはそんな天才肌はほとんどいなくなり、調子に乗って変人を気取っていた。だがここに来て、いろいろあって、思い知らされることになった。俺は、普通だ。特別な感性を持ち合わせていない。

 

だがそれでも、やっとこうして言葉を絞り出すようには、なった。20年かかった。

 

落ちもなにもない。どうしたらいいのかもわからない。ただ、もう少しだけ、もがいてみようと思っている。